音楽系の大学に進学した僕は、授業で作曲法や和声法、電子音楽や民族音楽を学ぶほか、自分自身で、シンセサイザーのことや編曲法なども学びました。
とは言え、大学のカリキュラムでは、ヒーリング音楽やニューエイジ・ミュージックについて学ぶような課程はありませんでしたので、自身の専門ジャンルである、それらの音楽については独学で研究しました。
この頃には、自分の所有する喜多郎さんのCDコレクションも増えていましたが、大学図書館の録音資料(CD・テープ)でも、喜多郎さんの作品が所蔵されており、頻繁に利用して、勉強に役立てました。
中でも、最もよく利用したのが、1990年に行われた、『古事記』のコンサートツアーの模様を収録したライブ映像「KOJIKI-A Story in Concert」でした。(こちらは、レーザーディスク版が、図書館に所蔵されていました)
このライブ映像はとても気に入り、大学在学中は、何度も何度も視聴しました。
(もしかしたら、職員の司書の方に、「またこれか…」と思われていたかも?)
これは後に、個人的にDVDを購入しましたが、名作『古事記』のライブ演奏を、見事なカメラワークでとらえた作品と言えます。
(喜多郎さんのYouTube公式チャンネルでも公開されています。ぜひ、ご覧ください)
さて、大学に入学した当初は、エレクトーン講師だった母親が所有する電子オルガンを借りて、練習をしたり、曲作りの勉強をしたりしていましたが、自分自身のシンセサイザーを入手するのが、一つの夢でした。
そんな訳で、アルバイトをして貯めたお金で、最初の一台を購入。
コルグ・ヤマハ・ローランドのシンセサイザーを、実際に店頭で試し弾きして、音を聴き比べた上で、コルグを選びました。
実は喜多郎さんも、コルグのシンセサイザーを主に使っておられます。(その他のメーカーのものも、使用されてはおられますが…)
喜多郎さんの曲で聴き慣れていた影響もあったかと思いますが、コルグ・シンセサイザーの音色が、弾いていて、一番心地よく感じました。
この、最初に買った機種は、当時(1996年)発売されたばかりの、KORG N364というシンセでした。
この頃の、コルグ・シンセのフラッグシップ機は、Trinityという機種でしたが、N364は普及機モデルで、ファースト・シンセとしては、シンセサイザーの基礎や操作を覚えるのに役立ちました。
学生時代に、このシンセで色々と学んだり、曲作りをしたりしていたのが、良き思い出です。
(ちなみにその後は、Trinityの後継機の、TRITONというシリーズのモデル、TRITON STUDIOというシンセを、長年愛用しました。このTRITONは、喜多郎さんも使用されていたモデルです。)
そんな大学1回生の頃、喜多郎さんが『マンダラ』以来、2年ぶりにアルバムをリリースされました。
タイトルは、『Peace on Earth』。
なんと、クリスマス曲のカバーアルバムでした。
(喜多郎さんのYouTube公式チャンネルより↓)
収録曲は、「主よ、人の望みの喜びを」「きよしこの夜」「荒野の果てに」「もろびとこぞりて」「リトルドラマー・ボーイ」「ジングルベル」「星かげさやけき」などなど。
おなじみのクリスマス・ソングから、讃美歌の名曲までを、喜多郎さんがシンセで奏でる、異色のカバーアルバムでした。
喜多郎さんの音楽と言えば、“和風”とか“アジア・東洋風”というイメージが一般的かと思います。
ですので、喜多郎さんがクリスマスソングを演奏…と言うと、「えっ!?」となる方も多いかもしれませんね。
実際、僕もこのアルバムを購入して、曲目を見て、すごく意外に思いました。
それに、喜多郎さんは、基本的にカバー演奏はされない方なので、カバーアルバムと言えるのは、唯一、このCDだけと言えます。
とは言え、2年前の「マンダラ」コンサートが、強く記憶に残っていた時期なので、クリスマス曲を、“マンダラ・テイスト”でロックな感じにしているのかも…と、恐る恐るCDを再生しました。
すると、とても穏やかで透明感のある、(本来の)喜多郎さんらしい、美しいシンセサウンドを味わえるアレンジとなっていました。
「喜多郎さんが、元の静かな路線に回帰された!」
このCDを聴いて、嬉しくなりました。
「きよしこの夜」も「もろびとこぞりて」も、意外なほどに喜多郎さんのシンセ・サウンドにマッチしていて、素晴らしい演奏でした。
(「ジングルベル」の途中で入る掛け声が、『古事記』の「饗宴」の掛け声“サッ!!”そのまんまで、ちょっと笑ってしまいましたが…)
アルバム『Peace on Earth』は、ニューエイジ路線な曲を求めていた自分にとって、大変嬉しい、喜多郎さんのニューアルバムとなりました。
このアルバム『Peace on Earth』は、今でもクリスマスの時期には必ずかけて、愛聴しています。
さて、喜多郎さんは1996年に、そのカバーアルバムを出されましたが、その翌年1997年には、香港の映画『宋家の三姉妹』の音楽を担当。
同作で、香港アカデミー賞の音楽賞を受賞されました。
「喜多郎さんは、やっぱりすごいなあ!」と思いましたが、何故か日本国内では、ニュースなどでもほとんど扱われませんでした。
(映画雑誌の隅っこに、ちょっと書いてあったのを見つけた程度でした)
この頃の僕は、大学2回生。
喜多郎さんのほか、久石譲さんや姫神・星吉昭さんなど、国内外のニューエイジ系のアーティストの作品を、数多く聴いては、作曲の勉強を熱心に行っていました。
でも、やはり中心となったのは、そのお三方。
とりわけ、喜多郎さんの新作を待ち遠しく思っていました。
そんな1998年。
喜多郎さんの待望の新作『GAIA-ONBASHIRA-』が発売され、早速購入しました。
「④アルバム『Gaia~Onbashira』からグラミー賞受賞作『Thinking of you』へ」につづく
※今回のコラムで紹介した作品が、喜多郎さんのYouTube公式チャンネルで公開されていますので、紹介します。
ライブビデオ『KOJIKI:A Story in Concert』https://www.youtube.com/playlist?list=PLYrSaDwJaL0-ikLJNLXRERAwnN0cqW4DF
カバーアルバム『Peace on Earth』https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_n_TV5OoTapeTgXSR76iwnr5bNqL52g2gM