<特別コラム:喜多郎と宗次郎~似てる?似てない?徹底比較!>

【後編】

 

 シンセサイザー奏者の喜多郎さんと、オカリナ奏者の宗次郎さんを徹底比較する、特別コラム。

 前編、中編と、外見・人物像・音楽性などを次々に比較してきました。

 

前編…比較その①:外見、比較その②:人物

中編…比較その③:音楽性

・後編…〇〇〇の〇〇郎犯人説、比較その④:知名度・その他、おすすめ作品紹介、比較おまけ

 

 

 いよいよ後編です。

 

 音楽関連の事柄の他に、喜多郎さんと宗次郎さんが混同されてしまう原因(犯人)として、ある有名なキャラクターが思い当たりました。

 

<ゲゲゲの鬼太郎犯人説>

 日本人だれしも知っている、妖怪の少年キャラクター・鬼太郎

 ご存知、水木しげるさん原作の漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の主人公ですが、喜多郎さんと宗次郎さんが混同されてしまう原因の一つが、この鬼太郎の存在であると考えています。

 目玉おやじもビックリな説かもしれませんが、解説します。

 

 喜多郎さんの芸名の由来が、ゲゲゲの鬼太郎から、ということは前編にて述べました。

 

 実はこの鬼太郎、オカリナを吹くんです!(アニメ版第3作・第4作にて)

 

 さらに、オカリナを武器にして悪い妖怪と戦ったりします。オカリナの唄口のところがぐ~んと伸びて、剣のようにして戦います。このアニメのゲゲゲの鬼太郎のイメージで、鬼太郎と言えばオカリナを持っているという印象が、一般的に浸透してしまっており、

 

 オカリナを吹くキャラクター⇒鬼太郎⇒キタロー⇒喜多郎⇒オカリナ奏者

 

 という風に、勘違いされている可能性があります。

 実際には、オカリナ奏者は宗次郎さんなのですが、喜多郎さんがオカリナ奏者と間違われてしまう原因・犯人は、ゲゲゲの鬼太郎にあるのではないかと考えています。

 

 それにしても、オカリナは元来陶器製で割れやすく、とてももろいので、武器にするには圧倒的に不向きだと思われますが、きっと鬼太郎のことなので、妖力で強化して戦っているのでしょう。

 また、同じく水木しげるさんのもう一つの代表作『悪魔くん』にもオカリナが登場します。

 こちらは“ソロモンの笛”という名称で登場し、重要なアイテムとなっています。(一説には、このソロモンの笛をアニメの鬼太郎に流用して、鬼太郎の妖怪オカリナとなったそうです)

 水木しげるさん、もしかしたらオカリナが好きだったのかもしれませんね。

 

 

<比較その④:知名度・その他>

 喜多郎さんと宗次郎さんの知名度の比較ですが、世界的な知名度の高さについては、喜多郎さんの方が圧倒的に高いです。

 やはりアメリカを拠点とし、ワールドワイドにコンサート活動をされているので、日本人ミュージシャンの中でも、群を抜いて国際的知名度は高いです。

(一般の日本人男性で、ロングヘア&髭の外見でバリ島を歩いていたら、現地の人に「Oh!Kitaro!!」と声をかけられたという逸話があったりします)

 

 対して宗次郎さんは、オカリナ愛好者やニューエイジ音楽愛好者の方ならば、海外でも知っている人はおられるとは思いますが、一般的な知名度は、日本や東アジアに限られてくると思います。

 活動拠点が日本で、コンサートも主に日本国内がメインなので、やむなしですが、90年代を中心にTV出演を活発にされていたので、日本では40代より上の世代の人なら、宗次郎さんの知名度はそこそこ高いと思われます。

 逆に若い世代(30代より下の世代、特に20代以下)の人の場合は、宗次郎と言うと、オカリナ奏者ではなく、剣客マンガ『るろうに剣心』に登場する剣士のキャラクターを連想するようです。

 

 もっとも、喜多郎さんと宗次郎さんを混同してしまっておられる人も少なくはないので、日本での知名度はあまり当てにはならないかもしれません。

 

 受賞歴に関しては、喜多郎さんは、ゴールデン・グローブ賞(映画『天と地』音楽)、グラミー賞(アルバム『Thinking of you』)を始めとして、香港の映画賞で最優秀音楽賞(映画『宋家の三姉妹』音楽)や日本レコード大賞特別賞などを受賞。グラミー賞には、ニューエイジ部門の常連として計17回(2019年時点)もノミネートされています。

 一方、宗次郎さんは日本レコード大賞企画賞を受賞されています。

 

 受賞歴についても、国際的な評価は喜多郎さんの方が受けておられますが、一つ注意しなければならないことがあります。

 

 それは、グラミー賞が、あくまでアメリカ国内で発売され流通した作品が対象となるということです。

 ですので、喜多郎さんのグラミー受賞あるいはノミネートされた作品を、日本人多くの誰もが知っている、聴いたことがあるという状況には、残念ながらなっていません。(日本でもCDは一応発売されてはいますが

 喜多郎さんの知名度や人気に関しては、日本よりもむしろ、海外の方が高いと思われます。

 

 また、宗次郎さんのアルバムの流通は、基本的に日本国内が中心ですので、グラミー賞の対象にはなりませんが、例えば、アルバム『古~いにしえみち~道』ならば、喜多郎さんの『空海の旅』シリーズにも、決して引けを取らない素晴らしいクオリティの作品ですので、グラミー賞にノミネートされてもおかしくないレベルだと思います。

 

 コンサートに関しては、アメリカが拠点の喜多郎さんは、日本でコンサートが開催される頻度はそれほど多くはありません。宗次郎さんの方が、日本においてコンサートで生演奏にふれられる機会が、圧倒的に多いと言えます。

 

 こうして考えると、CD販売やコンサート興行の面からみて、宗次郎さんが邦楽アーティストだとすると、喜多郎さんは、もはや洋楽アーティストと言ってしまってもよいのではないかと思えるほどです。

 

 

<おすすめ作品紹介>

 

 喜多郎さんと宗次郎さんの徹底比較、いかがだったでしょうか?

 この記事が、お二人の違いや特色について、理解を深めることにつながれば幸いです。そして、ぜひ、お二人の作品に触れていただくことができればと思います。

 そこで最後に、お二人のおすすめ作品を紹介したいと思います。

 

 この記事を読んで下さった方で、喜多郎ファンだけど宗次郎は聴いたことがない、あるいは、宗次郎ファンだけど喜多郎は聴いたことがない、という方もおられるかもしれません。

 または、二人ともあまり聴いたことがないけど、どの作品から聴いたらいいのかわからない、という方もおられるかもしれません。

 

 お二人とも長いキャリアを持ち、CDも、オリジナル・アルバムやベスト盤を含め30枚以上出しておられますので、最初にどれを聴いたらいいか迷うかもしれません。

 ベスト盤を聴くという手もありますが、ベスト・アルバム自体もかなりの種類が出ていますので、オリジナル・アルバムとベスト・アルバムの双方で紹介したいと思います。

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(喜多郎ファンにおすすめの宗次郎作品)

 

『古~いにしえみち~道』

 

 2010年に発表された宗次郎さんのオリジナル・アルバム。

 喜多郎ファンの方なら、おそらく東洋的日本的な響きを好んでおられる方も多いかと思いますが、この『古~いにしえみち~道』は、そんな喜多郎ファンの方に、特におすすめの作品です。

 「いにしえ~万葉のこころ~」「古~いにしえみち~道」「KAN-NON~観音~」「炎~求道~」など、まさにを感じさせてくれるオカリナ・サウンドです。

 宗次郎さんの日本的な曲調のアルバムは、他にもJapanese Spirit『まほろば』などがありますが、その中でも、僕はこの『古~いにしえみち~道』が一番のお気に入りです。

 このアルバムの前後(2009年、2013年)に発表された『オカリーナの森から』『オカリーナも森からとともに、宗次郎さんの最高傑作アルバムだと思っています。

 『古~いにしえみち~道』を聴いていると、奈良大和路の風景が目に浮かんでくるかのようです。

 この作品では、奈良大和路や仏教が大きなモチーフとなっているようで、ジャケット写真は、奈良県宇陀市の大宇陀・阿騎野の山並みの写真が使われ、また、室生寺や中宮寺の仏像の写真や、奈良県桜井市の長谷寺の枝垂れ桜の写真なども使われています。

 ぜひ、宗次郎さんのオカリナによる“和の響き”をお楽しみ下さい!

 

※アルバム『古~いにしえみち~道』より「古~いにしえみち~道」

 

宗次郎さんのYouTube公式チャンネルより)

 

 

『宗次郎オリジナル・ベスト 19912002

 

 宗次郎さんのオリジナル曲を集めたベスト・アルバムの中では、こちらを紹介しておきます。

 手っ取り早く、宗次郎さんの代表曲を聴いてみたい、という方にはぴったりのベスト・アルバムで、「故郷の原風景」「水心」「天空のオリオン」といった人気曲や、コンサートでもよく演奏される曲が収録されています。

 さらに、宗次郎さんの代表曲「大黄河」も、大島ミチルさんのアレンジ版で収録されており、入門盤としてもおすすめできる1枚となっています。

 他にもベスト盤としては、『宗次郎ゴールデン☆ベスト オリジナル編』がありますが、収録曲はほぼ同じ内容で、曲数自体は、『宗次郎オリジナルベスト 19912002』の方が一曲多く収録されています。

 このベスト盤を聴いた上で、『木道(きどう)』『風人(ふうと)』『水心(すいしん)』の自然三部作(日本レコード大賞企画賞受賞作)や、気に入った曲が収録されているアルバムを聴いてみるというのも良いと思います。

 

 

CD紹介とは関係ありませんが、2014年に、宗次郎さんが群馬テレビのニュース番組に出演された際の動画が、群馬テレビ・ニュースeye8YouTubeチャンネルにて公開されていますので、紹介します。宗次郎さんのことや、オカリナのこと、オカリーナの森での活動のことなどがよく分かる動画です。途中、宗次郎さんによるオカリナ生演奏もあります。

 

 

 

(宗次郎ファンにおすすめの喜多郎作品)

 

Thinking of you

 

 1999年に発表された喜多郎さんのアルバムで、43回グラミー賞最優秀ニューエイジ・アルバム賞受賞作品

 宗次郎ファンの方でしたら、オカリナを含む“笛”の音色が好きな方も多いと思います。

 『Thinking of you』では、喜多郎さんが吹くインディアン・フルートによる曲「Mercury」の他、ペルーからのゲスト・ミュージシャンを迎えて、ケーナサンポーニャといった民族楽器の笛を、ふんだんに取り入れた曲「Fiesta」や「Harmony Of The Forest」も収録されており、オカリナにも相通ずる音色で、気に入っていただけると思います。

 喜多郎さんならではの、東洋的日本的な詩情を感じさせるメロディーや音色を味わうこともでき、繊細な自然の風景から壮大な大宇宙まで、イマジネーションの翼を広げさせてくれる作品です。

 僕は『Thinking of you』が、喜多郎さんのアルバムの中では一番のお気に入りで、『古事記』とともに喜多郎さんの最高傑作だと思っています。

 

※アルバム『Thinking of you』より、アンデスの笛ケーナの音色が印象的な「Fiesta フィエスタ」

喜多郎さんのYouTube公式チャンネルより)

 

 

『シンフォニー・ライブ・イン・イスタンブール』

 

 2014年に発表されたライブ・アルバムで、20143月のトルコ・イスタンブールでの、オーケストラとのジョイント・コンサートの模様を収録したアルバム。喜多郎さんの代表作が収録されており、ベスト盤としても入門盤としても最適な1枚です。第57回グラミー賞ベスト・ニューエイジ・アルバム、ノミネート作品。

 宗次郎ファンの方の中には、アコースティックな音の方が好みで、シンセ(電子音)ばっかりのCDはどうもという方もおられるかもしれません。

 この『シンフォニー・ライブ・イン・イスタンブール』は、メインのメロディーは喜多郎さんのシンセですが、他のパートはオーケストラが中心となっており、喜多郎さんのアルバムの中では、もっともアコースティックな響きのアルバムと言えます。

 収録曲も、ゴールデン・グローブ賞受賞の『天と地』、グラミー受賞の『シンキング・オブ・ユー』、代表曲『シルクロード』、ビルボード・チャート・ニューエイジ部門1位獲得作の『古事記』など、喜多郎さんの代表アルバムからの曲を楽しむことができ、「マーキュリー」では、アルバム『Thinking of you』の原曲とは違ったアレンジで、喜多郎さんが吹くインディアン・フルートの音色を堪能することができます。

 

 まずはこのCDを聴いてから、『古事記』や『Thinking of you』といったアルバムを聴いてみるのも良いと思います。

 

※以下の記事もCD紹介とは関係ありませんが、2013年の喜多郎さんへのインタビュー記事です。読むと、喜多郎さんの素顔・人物像への理解が深まると思いますので、紹介します。

『生ける伝説の素顔に迫る 喜多郎インタビュー』(https://www.cinra.net/interview/2013/12/25/000000

 

 

 

<比較おまけ:ファン層・客層>

 

 喜多郎さんと宗次郎さん、このお二人のコンサートを聴きに来ている客層は、それぞれ少し違う感じがするなあと思ったことがあります。

 

 ともに、ニューエイジ音楽の代表的アーティストとして知られる喜多郎さんと宗次郎さんですが、その辺りの客層の違いは、演奏曲目の違いによることも関係しているのかもしれません。

 

 喜多郎さんのコンサートは、オリジナル曲オンリーですので、必然的に喜多郎さんの音楽を聴きこんでいる方が中心となると思います。そのためか、喜多郎さんのコンサートの客層は、結構、玄人っぽい感じの人が多いというか、割と音楽通な雰囲気の方が多いような気がします。

 

 宗次郎さんの方は、コンサートの演目にもよりますが、割とよく知られた童謡や抒情歌も演奏されることもあって、普通の音楽好きな方や素朴な感じの方が多いような気がします。

 また、オカリナの演奏に挑戦している子供さんもいてると思うので、小学生やファミリー層の姿もたまに見かけます。

 

 とは言え、喜多郎さんも宗次郎さんも、コンサート会場の年齢層は高めですね。自分なんかは、割と若い方の世代に入ってしまうかもしれません。

  

 僕のように、お二人とも聴くという人も多いかもしれませんが、コンサート会場のお客さんの様子を見ていて、何となくそんなことを感じたこともあります。