◎縄文ノ水月(ウミ)~三方五湖幻想~<解説>

 

<『縄文ノ水月(ウミ)~三方五湖幻想~』について>

 

『縄文ノ水月(ウミ)~三方五湖幻想~』は、福井県・三方五湖(みかたごこ)の美しい自然と、その周りで約1万年前に栄えていた縄文遺跡である、鳥浜貝塚遺跡をモチーフにした作品です。

 

また、三方五湖の五つの湖のうち、水月湖(すいげつこ)という湖も大きなモチーフとなっております。

 

水月湖では、世界的に貴重な、7万年に渡る年縞(ねんこう:湖底の堆積物の層のこと)が発見されています。それは、古代の環境を知るためのタイムカプセルとされ、注目されています。

 

元来はケルトの民族楽器である、ホイッスルの音色により、太古の世界・縄文へのロマンをテーマに描いた壮大な音楽紀行。

 それが、『縄文ノ水月(ウミ)~三方五湖幻想~』です。

 

ケルト文化と縄文文化には、自然崇拝や独特な渦巻き文様、生と死を繰り返す輪廻思想など、とても多くの共通点が見られます。

 

この作品を作曲していて、ホイッスルの音色と“縄文”が、驚くほどに親和性が高いことを感じました。何か共鳴するものがあるのかもしれません。

 

ヒーリング・ホイッスルの演奏を通して、遥かいにしえの世界、縄文ワールドへのイマジネーションを、ぜひお楽しみください!

 

                                              令和2年(2020年) 春 アシタツ

 

 

 

<福井県・三方五湖と縄文>

 

 景勝地として知られる“三方五湖(みかたごこ)”は、福井県の若狭にあります。

 

三方湖(みかたこ)、水月湖(すいげつこ)、菅湖(すがこ)、久々子湖(くぐしこ)、日向湖(ひるがこ)の五つの湖から成る名勝です。

 

付近は豊かな自然に包まれ、湖畔を巡る自動車道(レインボーライン)やサイクリングロードが整備され、福井県を代表する観光地のひとつとして知られています。

 

その5つの湖のうち、三方湖の湖畔では、今から約120005000年前に栄えた縄文時代の集落遺跡鳥浜貝塚が、発掘されています。

 

遺跡周辺では現在、復元された竪穴式住居や、発掘品を展示した若狭三方縄文博物館などが整備され、歴史公園「縄文ロマンパーク」として観光できるようになっています。

 

数年前の夏に、この縄文ロマンパークを訪れた際、遥かいにしえの縄文ロマンに心打たれ、ぜひ音楽で“縄文ワールド”を表現したいと思いました。その思いが結実したのが、本作品です。

 

また、三方湖の隣の水月湖は、世界的に貴重な湖とされています。

 

水月湖の湖底には、約7万年に渡る堆積物の層・年縞(ねんこう)が発見されています。それは、1年ずつが地層のような縞模様で積み重なったもので、世界一の長さを誇る年縞とされています。

 

現在、地質学の年代決定における、世界標準の物差しと定められています。

その年縞について、実物を分かりやすく展示した施設である、福井県年縞博物館も縄文ロマンパークにあります。

 

この年縞博物館を昨年の春に見学し、縄文からさらに古い時代へのロマン、果てしなき地球と人類の歩みにも、思いをいたすことが出来ました。

 

壮大なドラマを感じました。

人間が自然と共生していた“縄文”。

 

そして、人知が及ばないほどの、壮大でダイナミックな地球の歩みを、音楽を通して感じていただくことが出来れば、幸いに存じます。

 

 

若狭三方縄文博物館ホームページ

https://www.town.fukui-wakasa.lg.jp/jomon/index.html

 

福井県年縞博物館ホームページ

http://varve-museum.pref.fukui.lg.jp/

 

 

 

<楽曲解説> 

縄文ノ水月(ウミ)~三方五湖幻想~

夜明け~縄文ノ暁~

雪どけのムラ~五湖の春~

蒼き湖(ウミ)へ~風と舟と青空と~

炎神(ホムラガミ)~大地を司りしもの~

満天ノ星々~縄文ノ宇宙(ソラ)

鳥浜ムラの子どもたち~風・ワラベ~

縄文流転~イノチハメグル~

感謝のイノリ~森・大地・湖の恵み~

水月湖讃歌~7万年の時空(トキ)をこえて~

(※全曲、YouTubeにて試聴できます)

 

 

①縄文ノ水月(ウミ)~三方五湖幻想~

 

<解説>

 この曲は、アルバム全体のメインテーマ的な位置づけで作曲しました。

三方五湖の雄大な景色と、縄文世界のダイナミックな営みを表現したいと思いました。

豊かな大自然の息吹に包まれながら、その自然とともに生き、暮らしていた縄文の人たち。

 

若狭三方縄文博物館で見た、多くの土器や出土物。

それらと対面すると、縄文の人たちの日々の暮らしぶりが、脳裏に浮かんできました。

 

その時に感じた様々なイメージが、この曲を生み出すモチーフになりました。壮大な縄文世界を感じられるような、広がりのある曲を作りたいと思いました。

 

曲は、ゆったりとした前奏部(イントロ)と、動きのある主要部から成ります。

前奏部は、湖が広がる雄大な光景をイメージし、主要部は、その湖・大自然の中で活き活きと暮らす縄文の人たちや、縄文世界の営みをイメージしました。

 

伴奏は、シンセサイザー音源ながらも、オーケストラ的なシンフォニック・サウンドをベースに編曲しています。

 

YouTubeで試聴>

 

 

②夜明け~縄文ノ暁~

 

 

<解説>

縄文時代の、夜明けの光景はどんな感じだったのでしょうか。

湖には霧が立ち込め、森の木々の間から静かに朝日が差し込み、小鳥たちはさえずり始める…。

 

霧が晴れ、蒼い湖面は日光が反射して、キラキラと輝く。

目を覚めした縄文の人たちが、朝の空気を肌で感じながら、鳥たちのさえずりに耳を傾けつつ、朝食を食べ1日の活動を始めていく

 

現代人よりも、はるかに健康的な朝を過ごしていたかもしれません。

 

そんな、縄文の夜明け・朝をイメージして作った曲です。

 

シンセサイザーの透明感のあるサウンドをメインにしつつ、ヒーリング・ホイッスルの澄んだ音色で、朝の爽やかな雰囲気を表現できればと思いました。

 

曲間で、聴こえてくるカッコウの鳴き声は、ホイッスルによる鳴き真似で奏でています。

  

YouTubeで試聴>

 

 

 

③雪どけのムラ~五湖の春~

 

 

<解説>

三方五湖には、夏のほか、早春の季節にも訪れたことがあります。

 

彼方の山の頂付近は白い雪に覆われ、梅の花が咲き誇る湖畔とのコントラストが美しく、心に残りました。

(※三方五湖周辺は、梅の名所でもあります)

 

縄文時代の人たちも、雪どけの早春には春の到来を喜びながら、白い雪と春の花々を見ていたのかもしれません。

そんな、春の歓喜に満ちた縄文のムラのイメージで作曲しました。

 

~爽やかで暖かい春風が、ムラの中を通り抜けていきます~

~ムラの人々は冬ごもりから外に出て、新たな春の訪れを祝い、喜びながら生活を始めていきます~

 

この曲では、ロー・ホイッスルG管という笛を使っています。

通常使うホイッスル(ティン・ホイッスルD管&C管)よりも、やや低い音域の笛ですが、落ち着いた音色が出る笛です。

 

この音色が、冬から春へと移り変わっていく湖の風景や、早春の風をイメージし、やがてクライマックスのメロディーへと受け継いでいきます。

 

曲の後半のクライマックスでは、高い音域の笛(ティン・ホイッスルC管)がメロディーを奏でます。縄文の人たちの喜びをイメージして表現しました。

  

YouTubeで試聴>

 

 

④蒼き湖(ウミ)へ~風と舟と青空と~

 

 

<解説>

三方五湖の縄文遺跡では、縄文の人たちが作った大きな丸木舟も出土しています。長さが5メートルを超えるであろうと思われるような、大きな丸木舟です。

 

三方湖の湖畔にある、若狭三方縄文博物館で展示されており、見学することができます。

その舟を見学していて想像しました。

 

大きな丸木舟に何人かで乗り込み、掛け声をかけて、蒼い湖へと繰り出していた縄文の人たちの姿を。

 

漁をしたり、さらには海を目指して漕いで行ったり…。

縄文の船乗りの男たちの、勇ましくたくましい姿をイメージしました。

 

そんなイメージで作った曲が、この「蒼き湖(ウミ)へ~風と舟と青空と~」という曲です。

 

ダイナミックで躍動感のあるイメージを、シンフォニックなサウンドと、ヒーリング・ホイッスルの音色で表現しています。また、野性味を出すため、パンフルートという笛の音色をシンセサイザーで出して編曲しています。

(※アンデスやルーマニアなど世界各地の民族音楽でみられる笛。瓶をフッフッと吹いたときに鳴るような音色)

 

蒼い湖と真っ青な空、そして、湖面を風と共に渡っていく、大きな丸木舟の姿をイメージしながら聴いていただけると幸いです。

 

 

YouTubeで試聴>

 

 

⑤炎神(ホムラガミ)~大地を司りしもの~

 

 

<解説>

縄文ロマンパークのそばには、青少年向けの施設やキャンプ場があります。

キャンプといえば、やはりキャンプファイヤーが楽しみの一つ。

 

縄文の人たちも、夜には焚き火をして、その周りに集い、食べたり踊ったりといったマツリをしていたことでしょう。

 

また、縄文には様々な土器が作られました。

土器を作るのにも、火が必要です。

 

縄文の人たちは、もしかしたら、火に何か神秘的なものを感じていたかもしれません。

 

万物にカミが宿っている、というアニミズム文化である“縄文”。

火には、燃える力=大地のエネルギーが結晶化しているというイメージを抱き、火に宿るカミ・炎神(ホムラガミ)をテーマにして作曲しました。

 

力強いオーケストラ系のサウンドに、縄文の人たちの畏怖の念を込めました。

 

<YouTubeで試聴>

 

 

 

⑥満天ノ星々~縄文ノ宇宙(ソラ)

 

 

<解説>

縄文の夜のマツリ。

火の周りを囲んでの盛大なマツリが終わり、鎮火する頃には、空には一面の星空が広がっていたことでしょう。

 

今の時代よりも、ずっと清らかで澄んだ空気のおかげで、現代人が見上げるよりも、はるかに美しい満天の星空が広がっていたことと思います。

 

この曲は、縄文の人たちが見上げていたであろう、満天の星空をイメージして作りました。

 

草むらに寝転がって、父子で一緒に星を見上げたり、乳飲み子を抱いた母が、わが子に歌を聴かせながら、星を見つめていたかもしれません。

 

そんな、縄文の宇宙(ソラ)のロマンを、イメージしながら聴いてみて下さい。

 

楽曲は、ゆったりとしたテンポで、美しいメロディーラインにこだわって作った曲です。

伴奏には、キラキラときらめくようなイメージで、シンセサイザーのベル系の音も入れてみました。

 

 

YouTubeで試聴>

 

 

⑦鳥浜ムラの子どもたち~風・ワラベ~

 

 

<解説>

縄文の子どもたちは、どんな感じだったのでしょうか?

もちろん、現代のようなゲームなどはなかった時代です。

 

大自然の中を駆け回ったり、草花を摘んだり、時には大人の狩りについて行って、一緒に獣を追いかけたりして楽しんでいたことでしょう。

 

縄文の子どもたちならではの遊びや、日々の楽しみもきっとあったに違いありません。

この曲では、三方五湖のほとり、縄文の鳥浜ムラで暮らす子どもたちの光景をイメージしながら作曲しました。

 

無邪気に野山を走り回り、風を友とし、鳥や獣とたわむれながら、夕刻には、沈んでいく真っ赤な夕日を眺め、大好きな家族が暮らすムラへと家路についたことでしょう。

 

そんな縄文の無垢な子どもたちをイメージしながら、聴いてみて下さい。

 

<YouTubeで試聴>

 

 

 

縄文流転~イノチハメグル~

 

 

<解説>

若狭三方縄文博物館で印象に残った展示があります。

縄文人の寿命に関する展示です。

 

縄文人の寿命は、大体30代くらいだったようです。

 

現代からすると、とても短い寿命であり、それだけ長生きするのが大変だった時代です。

中でも、乳幼児や子供の死亡率は高く、大人に成長するまで生きながらえるのも大変だったようです。

 

縄文の人たちは、死と再生の思想=輪廻思想を持っていました。

縄文土器に見られる渦巻き模様が、そうした輪廻転生の思想を表しているかのようです。

 

短く限られた寿命だから、なおさら、転生への強い希望が込められていたのかもしれません。

 

この曲は、そんな縄文の輪廻思想をイメージして、作曲しました。

ホイッスル・ソロのシンプルなメロディーの中に、縄文の人々の輪廻の思い、生命の流転のイメージを込めました。

 

 

<YouTubeで試聴>

 

 

 

⑨感謝のイノリ~森・大地・湖の恵み~

 

 

<解説>

縄文の人たちは、自然と共生しながら暮らしていました。

春夏秋冬、それぞれの季節に様々な恩恵を大自然から頂きながら、豊かな精神文化=縄文文明を築いていきました。

 

その根底にあったのは、やはり、自然への畏怖と感謝の念ではないでしょうか。

三方五湖は、湖の周りに美しい森が広がり、山の幸と海の幸に恵まれ、縄文の人たちの食卓を、彩り豊かにしていたことでしょう。

 

自然と共生するには、やはり、自然への感謝の想いが欠かせないと思います。

この曲は、そんな縄文の人たちの、森・大地・湖といった大自然への感謝のイノリをイメージして作曲しました。

 

~自然と共生した縄文の人たち~

 

そこには、現代人が忘れてはならない、むしろ見習わなくてはいけないメッセージがあるように思います。

 

 

YouTubeで試聴>

 

 

⑩水月湖讃歌~7万年の時空(トキ)をこえて~

 

 

<解説>

このアルバムの最後を飾る曲「水月湖讃歌~7万年の時空(トキ)をこえて~」。

この曲は、縄文からさらに時代を広げて、7万年に渡る年縞が湖底に眠る、水月湖へのロマンをテーマに作曲しました。

 

水月湖の年縞については、先述しましたが、年縞博物館で実物を目の前にすると、本当に圧倒される感じでした。

 

地球の凄さみたいなものを感じました。

 

その時に感じた、地球のはるかな歴史ロマン、壮大さ。

そして、その年縞が眠る、水月湖の湖面の美しさを曲に込めたいと思いました。

 

作曲では、オーケストラ系のサウンドを使用して、ダイナミックに、そして抒情的に描いていきました。

 

メインのメロディーは、雄大な水月湖を讃えるようなメロディーを。中間部では、美しき水月湖をイメージして、ゆったりと流れる水のようなメロディーラインにしました。クライマックスでは、力強くファンファーレ(トランペット系の音色)を鳴らし、壮大に楽曲を締めくくります。

 

ロマンあふれる蒼き湖・水月湖を、ぜひイメージしながら聴いてください。

 

YouTubeで試聴>