宗次郎オリジナルアルバム第17作
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さわやかで、あたたかい曲調の作品に彩られて、前向きな気持ちになれる美しい作品。
発売日:1999.9.15(キティ:現ユニバーサルミュージック)
プロデュース:宗次郎
作曲:宗次郎
編曲:大島ミチル(①②⑤⑥)、田尻光隆(③④)、沢田完(⑦⑨)、朝川朋之(⑧⑩)
<レビュー>
①あゆみ(大島ミチル編曲)
オカリナに、パーカッション(打楽器)、ハープ、8弦ギター、そしてストリングス(バイオリン類弦楽器のアンサンブル)というアコースティックなアンサンブルで、このアルバム全体の方向性を見事に表現している。
明るく、さわやかな曲調がとても魅力的で、流麗なメロディーが素晴らしい傑作。
個人的に、“6拍子”の“さわやか系”の作品ということで、最も好きなタイプの曲。オカリナの音を通して、宗次郎さんの優しいお人柄が伝わってくるような気がする。聴いていて優しい気持ちになれる曲。
②花ふる道(大島ミチル編曲)
フォルクローレ(南米アンデスの民族音楽)風の曲。宗次郎さんお得意の曲調といえる。フォルクローレの中でも、楽しげな舞曲の雰囲気。
スタッカート(音を短く切って歯切れよく演奏すること)を効果的に使った演奏が素晴らしく、アレンジも見事。
宗次郎さんは、たいへんフォルクローレがお好きなようで、この曲でも、とても活き活きと楽しんで演奏されておられるのが、音を通して伝わってくる。聴いているこちらも楽しく幸せな気持ちになれる。(これこそまさに音楽の醍醐味!)
③三日月が笑ってる(田尻光隆編曲)
このアルバムの中で、もっとも日本的なメロディーラインの曲。
これもまた、宗次郎さんお得意の曲調といえるが、シンセサイザーを使ったアレンジも素晴らしい。特にイントロ・前奏部が印象的。
“月”をテーマにした宗次郎さんの作品は、これまでにも「月の下で」や「月まで歩いて」などがあったが、この曲は明るく楽しい雰囲気で描かれており、まさしくタイトル通り、“お月さんが笑っている”ような感じの曲である。
④西都(田尻光隆編曲)
哀愁漂うメロディーが印象的。
西都というのは、宮崎県に西都市という地名があるそうだが、ここでは、中国の古都・長安の別名の意味で使われているものと思われる。…とすると、宗次郎さん版“シルクロード”と言えるかもしれない。
ストリングスの編曲・アレンジが素晴らしく、オカリナとストリングスの見事なハーモニーを味わうことができる。
3曲目と同じく、この曲も何となく“月”をイメージするのだが、こちらは、夜空に寂しげに浮かんでいる月を、静かに見上げているような気持ちになる。
⑤旅立ち(大島ミチル編曲)
オカリナとパーカッション、そして8弦ギターのみというシンプルな編成ながら、圧倒的な躍動感を味わえる良曲。民族音楽の舞踊曲・ダンス曲が好きな方には、特におすすめの曲。グルーブ感(高揚感)あふれるリズムを堪能できる。
宗次郎さん作曲のメロディーも素晴らしく、とにかくカッコいい曲である。
イメージとしては、馬にまたがり颯爽と駆け出して行く、旅立ちのシーンを連想する。
⑥夢の道(大島ミチル編曲)
果てしない旅路を連想させるような曲調。
どこまでも続く道を歩き続けているような、ゆったりと、たゆとう雰囲気の曲。後半のヴォイスを取り入れたアレンジが印象的。
⑦道行(沢田完編曲)
オーケストラによるスケール感のある作品。このアルバムで最も大編成の曲であり、宗次郎さんの全作品を通じても、一二を争うほどの雄大さ壮麗さを感じさせる名曲。
もはや、オカリナとオーケストラによる交響詩と言ってもよい、壮大なスケールのサウンドを味わうことができる。
ゆったりとした美しく明朗なメロディーが大変素晴らしく、まるで、どこまでも広大な、澄み渡った青空や大自然が、眼前に広がっているかのような解放感を与えてくれる。傑作!!
⑧春の道(朝川朋之編曲)
透明感あふれるピアノとオカリナの音色が印象的。
ロマンチックなメロディーが素晴らしく、宗次郎さんの作品中で最もロマンチックで清らかな透明感を味わえる作品と言える。オカリナ、ピアノ、ストリングスによるアンサンブルが美しい。
まるで、感動的なシーンで流れる映画音楽のような、豊かな抒情性をたたえた傑作。
⑨大空と雲と(沢田完編曲)
親しみやすい美しいメロディーラインが素晴らしい。タイトル通り、広々とした大空をイメージできるような雄大な曲。
オーケストレーション(オーケストラの編曲)が見事で、曲が次第に、どんどんと盛り上がって行く構成が素晴らしい。7曲目と共に、オーケストラとのライブ演奏を聴いてみたいと思える良曲。
⑩青空を越えて(朝川朋之編曲)
マンドリンの音色が印象的な可愛らしい雰囲気の曲。アンサンブルが素晴らしく、オカリナとマンドリンの音色は、とても相性が良いことがよくわかる。
前向きな気持ち・晴々とした気持ちになれる、さわやかで楽しい曲。
<総評>
全体的に明るく、さわやかで温かな曲調の作品が多く、数ある宗次郎さんのオリジナルアルバムの中で、最も清々しい印象の作品。“空”や“道”といったテーマの曲が多いのも特徴的。
宗次郎さんの曲の一つのタイプとして、“さわやか系”の曲は、これまでのアルバムにも各1~2曲ずつ程度入っていることが多かったが、『あゆみ』は、それらをまとめて凝縮した感がある。
宗次郎さんのアルバムを聴いてみたいと思っておられる方で、曲調やテーマ的に重くなく、長調の曲が多くて気楽に聴いて癒されるようなCDを求めておられる場合は、この『あゆみ』を選べば間違いはない。
自分自身、宗次郎さんの作品の中でも、“さわやか系”の曲が特に大好きなのだが、『あゆみ』はお気に入りの1枚。個人的には、90年代の宗次郎さんのアルバムの中では、最も好きなアルバムだったりする。(ちなみに、『あゆみ』は90年代最後の作品)
宗次郎さんのアルバムとしては、自然三部作や、次作の『天空のオリオン』の方が知名度は高いと思われるが、『あゆみ』は、もっと評価されるべき傑作であると言える。
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