宗次郎オリジナルアルバム第7作
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前作『ハーモニー』から進化し、ロックな風味も感じさせる意欲作。
発売日:1989.10.25(サウンドデザイン)
プロデュース:南里高世(TAKA NANRI)
作曲:南里高世
共同作編曲:大沢教和(JASRAC作品データベース表記による)
<レビュー>
①ヴォヤージ
プロローグ的なシンセサイザー曲。
喜多郎さんばりの、風のSE(効果音)や広がりを感じさせるパッド音(包みこむような広がりのある音)が心地よい。途中、高音の笛っぽい音が効果音的に入るが、宗次郎さんのオカリナではなく、シンセのホイッスル系の音と思われる。
幻想的・瞑想的な雰囲気の曲。
②風の大地
1曲目の静寂を打ち破るかのようなエレキギターの音に、初めて聴いた時は、飛び上がるくらいにびっくりしたのを覚えている。
スピード感のある激しいドラムのビートに乗って、宗次郎さんのオカリナ・ソプラノ管(高音域の笛)の高く澄んだ音が、吹き抜ける風を思わせるようなメロディーを奏でる。
『大黄河Ⅱ』のレビューの際、「水舞竜」を宗次郎POPと表現したが、この曲はまさに、宗次郎ROCKと言うべきか。
宗次郎作品全曲の中でも、「風の大地」は最も激しいタイプの曲と言える。宗次郎=癒し系音楽と思っている方は、この曲を聴けば、間違いなくイメージが変わるだろう。
メロディーの出だしの所が、のちの「水心」とちょっと似ている。
③ハイランド
前曲「風の大地」で興奮した精神を、鎮静するかのようなバラード。
サビ(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分)のメロディーがとても印象的。“ハイランド”は、高原とか山岳地方という意味だと思うが、割りと低音が強めのアレンジで、重厚感がある。
④季節の詩
3曲目と雰囲気が似ているので、たまに聴くと、どっちが「ハイランド」でどっちが「季節の詩」だったか、忘れてしまうことがある。
この曲も、サビのメロディーが中々キャッチーな曲である。
シンセのパーカッション(打楽器)音が効果的に配されたアレンジ・編曲となっている。
⑤オータム・ウィンド
このアルバムで一番のお気に入りの曲。なおかつ、南里高世さんが作曲された宗次郎作品の中では、この曲が一番好きだったりする。
タイトル通り、まさに風をイメージできる名曲。6拍子系のメロディーが印象的で、秋の哀愁を感じさせつつも、天空へと吹き抜けていくようなサビのメロディーが秀逸。
⑥エアー
オカリナとアコースティック・ギターをメインにしたアレンジなので、シンセ系サウンドが多いこのアルバムの中で、清涼剤的な役割を果たしている。
このアルバム『ヴォヤージ』の曲は、サビのメロディーが印象的な曲が多いが、「エアー」もそのタイプ。
オカリナの音色の持ち味を、とてもよく活かした良曲。
⑦フォーリング・スター
このアルバムの中では、割りと平凡な感じのメロディーなので、印象が弱い。
アレンジは個性があってユニークなのだが、サビのメロディーは別として、Aメロ(主旋律で1番初めの部分)が南里高世さん特有(?)の、素人っぽいメロディーラインの曲と言える。
⑧セイリング
この曲の方が、7曲目と比較して“星空”や“宇宙”をイメージできるような曲調なので、こちらを「フォーリング・スター」のタイトルにした方が、良かったのではなかろうか?と、聴く度に思う。
きらびやかなピアノ系の音が、何となく星を連想させるので、そう思ってしまうのかもしれない。ゆったりとしたメロディーが、広大な夜空をイメージさせる。
ラストはエピローグ的に、1曲目「ヴォヤージ」が流れて終わる。航海の終わりが、また新たな航海の始まりにつながる…そんな、ループするような世界観を、感じさせる構成となっている。
<総評>
前作『ハーモニー』のポップ路線を受け継ぎつつ、よりロックな作風に進化させた作品。
ある意味、突き抜ける所まで突き抜けてしまった感がある、“南里高世feat.宗次郎”3作目。
宗次郎さんが作曲を手がけていないオリジナル・アルバムという意味で、“南里高世feat.宗次郎”と表しているが、その中では『フォレスト』に次いで魅力的な作品。
ただ、それなりに“クセ”がある作品なので、宗次郎さんのオカリナの音色やアコースティック(生楽器)な響きに癒されたい…と考えているリスナー・聴衆には不向きな作品。(そういう方には『フォレスト』の方が良いと思う)
『ハーモニー』に続き、アメリカのベーシスト、ネーザン・イーストがレコーディングに参加しており、「風の大地」では華麗なベース・ワークを披露している。
ちなみに、このネーザン・イースト。来日した際には、“寧山 東”という名前の名刺を差し出すらしい。なかなかお茶目な方のようだ。
☆版権元サウンドデザインのYouTubeチャンネルより(公式動画)
「季節の詩」(4曲目)
「風の大地」(2曲目)
※注:CD収録版とはアレンジが異なる、ライブ演奏版の動画です。