<特別コラム>縄文を描いたニューエイジ・ミュージック~宗次郎『まほろば』&姫神『風の縄文』シリーズ・徹底比較!!

 

 宗次郎さんは、三内丸山遺跡にインスパイアされ、1998年にアルバム『まほろば』を発表。自然と共生していた縄文の人々のこころを、見事な音楽性で表現されました。

 

 実は、全く同時期に、宗次郎さんと同じく、日本のニューエイジ音楽の代表的アーティストである、姫神(星吉昭)さんが、縄文をテーマにしたアルバムシリーズ『風の縄文』三部作を発表されています。(ちなみに、星さんはこのシリーズで、日本レコード大賞企画賞を受賞されています)

 

 『風の縄文』三部作は、19961998年の三年間かけて制作・発表され、1997年には関連作とも言える「神々の詩」TBS系・同名TV番組テーマ曲)がヒット。姫神の代表作となりました。

 

 その『風の縄文』の三作目『縄文海流』と、宗次郎さんの『まほろば』が、ともに1998年発表ということで、縄文テーマのニューエイジ音楽のアルバムの発売が、同年に重なることとなりました。

 

 宗次郎さんも星吉昭さんも、三内丸山遺跡の発掘・発見に大きくインスパイアされた点では共通していますが、“縄文”を表現するための音楽的なアプローチは、全く異なっていると言えます。

 

 姫神の星吉昭さんは、1995年発表のアルバム『マヨヒガ』から大きく作風を変え、大胆にダンス・ビートやハウス音楽のリズムを取り入れて、そのスタイルを『風の縄文』シリーズ以降も受け継ぎ、それを深化させています。

 さらに、創作の“縄文語”を使った女性コーラスを取り入れ、独自の音世界を展開。

 姫神特有の民俗音楽っぽさも相まって、ダイナミックで力強い縄文ワールドを創り上げられました。

 ただ、星吉昭さん自身はシンセサイザー奏者ですので、作品のベースとなっているのは、シンセサイザー(電子音)のサウンド。それに、アコースティック楽器の音を加味する形となっていました。

 

 対して、宗次郎さんの『まほろば』は、アコースティックの音をメインにして、インストゥルメンタルにより、詩情豊かな縄文世界を描かれています。

 リズム楽器も、シンセによるダンス・ビートなどは一切無く、アコースティックなパーカッション類を使ったアレンジとなっています。

 

 同じ“縄文”をテーマにしたアルバムではありますが、宗次郎さんの『まほろば』と、姫神・星さんの『風の縄文』シリーズを比較すると、『風の縄文』は縄文世界のイメージを大切にしつつも、相当、現代的なサウンドとリズム・アレンジであり、リズミカルでポップな作品となっています。

 一方、宗次郎さんの『まほろば』は、縄文の人たちも奏でていたかもしれない、土笛(オカリナ)や太鼓(打楽器類)の音を大切にして、格調ある抒情的なアルバムとなっています。(この点は、編曲を担当された大島ミチルさん達の功績も大きいです)

 

 ですので、この2作を並べた場合、『風の縄文』シリーズの方が派手でキャッチーな作品であり、『まほろば』はそれに比べて地味と言えます。

 実際、『風の縄文』シリーズはヒットし、「神々の詩」はオリコン・チャートにも登場するほどのヒット作となり、音楽ファンの間の知名度も、『まほろば』よりも高いと言えます。

 

 自分自身、姫神作品も好きで、『風の縄文』シリーズも愛聴していますが、宗次郎さんの『まほろば』と比較して思うのは、“音楽表現上での縄文性”は、『まほろば』の方が高いのではないだろうか、ということです。

 つまり、実際の縄文時代の人々が演奏した、あるいは聴いていた音楽に近いのは、宗次郎さんのオカリナの音の方ではないかと思われることです。

 

 そのことは、各地の縄文時代の遺跡で土笛が出土していることから考えたことなのですが、『まほろば』の特に7曲目の「パチャママ~祈り~」は、そう思わせる要素が非常に高い音色となっています。

 

 もしも、縄文時代にタイムスリップすることができて、現地の人に『まほろば』と『風の縄文』の両方を聴いてもらったら、おそらく縄文人の皆さんは、宗次郎さんのオカリナの音色や『まほろば』の方に、親近感を持つのではなかろうかと、勝手に想像しています。(とは言え、意外と、姫神ヴォイスやダンスビートを聴いて踊り出すかもしれませんが…)

 

 宗次郎さんと姫神・星吉昭さんの音楽、作風は異なりますが、それぞれ素晴らしい魅力があり、一概に優劣をつけるようなことは決してできませんが、“縄文”をテーマにした音楽で、ダンサブルでリズムにのれる、ダイナミックな縄文ワールドを志向する場合は『風の縄文』シリーズを。

 抒情的で透明感があり、安らげる音世界を志向する場合には『まほろば』を聴くようにすれば、間違いはないと思います。

 

 先述のように、『風の縄文』は現代的な楽器・リズムを使って、縄文へのイマジネーションを分かりやすく表現していますので、本来の縄文サウンドの土笛の音色による『まほろば』を聴くことで、縄文性をより深く味わうことができますし、逆に、『まほろば』とともに『風の縄文』シリーズを聴けば、縄文世界のイメージをさらに膨らませることができると思います。

 

 そういう意味では、宗次郎さんの『まほろば』と姫神・星吉昭さんの『風の縄文』シリーズは、ニューエイジ・縄文・ミュージックを完全体にするという上で、互いに補完しあえる間柄となれるのではないかと思います。

 宗次郎ファン、『まほろば』ファンの方に、『風の縄文』シリーズをお薦めすることもできますし(個人的には2作目の『風の縄文・久遠の空』が好き)、姫神ファンの方にも、『まほろば』をお薦めすることができると考えています。

 

 姫神ファンの方で、この記事を読んで下さった方には、星吉昭さんとは、また違ったアプローチでの縄文音世界、アコースティックで安らかな、オカリナの音色による『まほろば』をぜひ味わっていただければと思います。

 

※ちなみに、姫神作品にも『まほろば』というアルバムがありますが、こちらは縄文をテーマにしたものではなく、平泉の自然や文化をテーマにした作品となっています。

 

※姫神・星吉昭さんも宗次郎さんも、青森・三内丸山遺跡で壮大な野外コンサートを実施されておられて、星吉昭さんは1997920日に、宗次郎さんは1998719日に、それぞれコンサートを開催されました。

 

 

☆参考記事

 宗次郎アルバム第16作『まほろば』レビュー