◎宗次郎アルバム第7作『ヴォヤージ VOYAGE』レビュー

宗次郎オリジナルアルバム第7

『ヴォヤージ VOYAGE

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前作『ハーモニー』から進化し、ロックな風味も感じさせる意欲作。

 

発売日:1989.10.25(サウンドデザイン)

 

プロデュース:南里高世(TAKA NANRI

作曲:南里高世

共同作編曲:大沢教和(JASRAC作品データベース表記による)

 

 

<レビュー>

①ヴォヤージ

 プロローグ的なシンセサイザー曲。

 喜多郎さんばりの、風のSE(効果音)や広がりを感じさせるパッド音(包みこむような広がりのある音)が心地よい。途中、高音の笛っぽい音が効果音的に入るが、宗次郎さんのオカリナではなく、シンセのホイッスル系の音と思われる。

 幻想的・瞑想的な雰囲気の曲。

 

②風の大地

 1曲目の静寂を打ち破るかのようなエレキギターの音に、初めて聴いた時は、飛び上がるくらいにびっくりしたのを覚えている。

 スピード感のある激しいドラムのビートに乗って、宗次郎さんのオカリナ・ソプラノ管(高音域の笛)の高く澄んだ音が、吹き抜ける風を思わせるようなメロディーを奏でる。

 『大黄河Ⅱ』のレビューの際、「水舞竜」を宗次郎POPと表現したが、この曲はまさに、宗次郎ROCKと言うべきか。

 宗次郎作品全曲の中でも、「風の大地」は最も激しいタイプの曲と言える。宗次郎=癒し系音楽と思っている方は、この曲を聴けば、間違いなくイメージが変わるだろう。

 メロディーの出だしの所が、のちの「水心」とちょっと似ている。

 

③ハイランド

 前曲「風の大地」で興奮した精神を、鎮静するかのようなバラード。

 サビ(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分)のメロディーがとても印象的。“ハイランド”は、高原とか山岳地方という意味だと思うが、割りと低音が強めのアレンジで、重厚感がある。

 

④季節の詩

 3曲目と雰囲気が似ているので、たまに聴くと、どっちが「ハイランド」でどっちが「季節の詩」だったか、忘れてしまうことがある。

 この曲も、サビのメロディーが中々キャッチーな曲である。

 シンセのパーカッション(打楽器)音が効果的に配されたアレンジ・編曲となっている。

 

⑤オータム・ウィンド

 このアルバムで一番のお気に入りの曲。なおかつ、南里高世さんが作曲された宗次郎作品の中では、この曲が一番好きだったりする。 

 タイトル通り、まさに風をイメージできる名曲。6拍子系のメロディーが印象的で、秋の哀愁を感じさせつつも、天空へと吹き抜けていくようなサビのメロディーが秀逸。

 

⑥エアー

 オカリナとアコースティック・ギターをメインにしたアレンジなので、シンセ系サウンドが多いこのアルバムの中で、清涼剤的な役割を果たしている。

 このアルバム『ヴォヤージ』の曲は、サビのメロディーが印象的な曲が多いが、「エアー」もそのタイプ。

 オカリナの音色の持ち味を、とてもよく活かした良曲。

 

⑦フォーリング・スター

 このアルバムの中では、割りと平凡な感じのメロディーなので、印象が弱い。

 アレンジは個性があってユニークなのだが、サビのメロディーは別として、Aメロ(主旋律で1番初めの部分)が南里高世さん特有(?)の、素人っぽいメロディーラインの曲と言える。

 

⑧セイリング

 この曲の方が、7曲目と比較して星空宇宙をイメージできるような曲調なので、こちらを「フォーリング・スター」のタイトルにした方が、良かったのではなかろうか?と、聴く度に思う。

 きらびやかなピアノ系の音が、何となく星を連想させるので、そう思ってしまうのかもしれない。ゆったりとしたメロディーが、広大な夜空をイメージさせる。

 ラストはエピローグ的に、1曲目「ヴォヤージ」が流れて終わる。航海の終わりが、また新たな航海の始まりにつながるそんな、ループするような世界観を、感じさせる構成となっている。

 

 

<総評>

 前作『ハーモニー』のポップ路線を受け継ぎつつ、よりロックな作風に進化させた作品。

 ある意味、突き抜ける所まで突き抜けてしまった感がある、“南里高世feat.宗次郎”3作目。

 宗次郎さんが作曲を手がけていないオリジナル・アルバムという意味で、“南里高世feat.宗次郎と表しているが、その中では『フォレスト』に次いで魅力的な作品。

 ただ、それなりに“クセ”がある作品なので、宗次郎さんのオカリナの音色やアコースティック(生楽器)な響きに癒されたい…と考えているリスナー・聴衆には不向きな作品。(そういう方には『フォレスト』の方が良いと思う)

 『ハーモニー』に続き、アメリカのベーシスト、ネーザン・イーストがレコーディングに参加しており、「風の大地」では華麗なベース・ワークを披露している。

 ちなみに、このネーザン・イースト。来日した際には、“寧山 東という名前の名刺を差し出すらしい。なかなかお茶目な方のようだ。

 

 

☆版権元サウンドデザインのYouTubeチャンネルより(公式動画)

「季節の詩」(4曲目)

 

「風の大地」(2曲目)

※注:CD収録版とはアレンジが異なる、ライブ演奏版の動画です。

 

 

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。

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