◎宗次郎アルバム第4作『心 KOKORO』レビュー

宗次郎オリジナルアルバム第4

『心 KOKORO

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「こころ」「雲を友として」など、TV番組のタイアップ曲を含む、初期の名作アルバム。

 

発売日:1987.5.25(サウンドデザイン)

 

プロデュース:南里高世(TAKA NANRI

作曲:宗次郎

共同作編曲:南里高世、坂本昌之、熱田公紀(JASRAC作品データベース表記による)

 

 

<レビュー>

①こころ

 NHK‘87ゆく年くる年」のテーマ曲。

 のちの「木道」「風人」「水心」の自然三部作のアレンジを担当する、編曲家・坂本昌之さんが参加しており、今作が宗次郎さんとの初タッグとなった。

 シンセサイザーを多用したアレンジだが、透明感のある見事なアレンジで、宗次郎さんのオカリナの音色とマッチしており、このアルバムを名作にと押し上げている。

 1曲目「こころ」は、ホ短調の哀しげなメロディーに始まり、ト長調に転調してからの展開が特に美しい。

 苦しみや悲しみを乗り越え平安へと至る、“こころ”のドラマチックな物語を感じさせる。

 余談だが、高校一年生の時に祖母が亡くなった際、葬儀会場でこの曲がBGMとしてかけられていた。葬儀屋さん、中々センスがいいなと思った。

 「こころ」を聴くと、その頃のことや、優しかったおばあちゃんのことが思い出される…。

 

②四季~愛しき子供たちへ~

 日本香堂「毎日香」CM曲。

 曲の構成、雰囲気が1曲目と非常によく似ている。特にサビのメロディー(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分のメロディー)は「こころ」の別バージョンかと思えるほどに似ている。

 途中の、オカリナのラーソファミードーレーという所の、オカリナとシンセの絡みが好き。

 

③清流

 イントロ・前奏部の、水の雫をイメージしているかのような、透明感のあるシンセサイザー・サウンドが印象的。タイトル通り、清涼感あふれる、さわやかな優しい曲。

 JRの発車メロディーとして使われていたらしい。(鶴岡駅など)

 

④思い出の小箱

 熱田公紀さんが作曲。郷愁感あふれる美しい曲。

 オカリナ・アルト管(中音域の笛)による主旋律も美しいのだが、途中の、オカリナ・ソプラノ管(高音域の笛)が副旋律を担当する間奏部もまた美しい…。

 

⑤若葉の頃

 どこか切ない雰囲気の曲。若葉というのは、青春時代の比喩だと思うが、叶わなかった初恋の悲哀を思い出しているかのよう…。

 オカリナ・ソロ(独奏)から始まるアレンジはすごくいいと思うが、曲調の面で、どうしても4曲目とかぶってしまう。

 12曲目もそうだが、よく似たそっくりな曲調・雰囲気の曲は、続けずに少し離してアルバムを構成した方が良かったのでは?という気も、いささか感じる。

 

⑥雲を友として

 大自然の偉大さを感じさせる名曲。テレビ朝日「ニュースステーション」番組内のコーナー“立松和平 心と感動の旅テーマ曲。

 上行形のメロディーが展開していくさまは、力強い。Bメロ(曲の構成の中で主旋律の2番目の所にあたる部分)は特に秀逸で、雲間から光が差すような、幻想的で美しい光景が目に浮かぶよう。

 シンセサイザーによる間奏部も非常に美しい。

 素晴らしいメロディーライン・アレンジ・演奏と、三拍子そろった傑作。

 

⑦地平線

 テレビ朝日「終着駅・ロマン紀行」テーマ曲。

 このアルバムの中で、最もPOPな雰囲気を持つ曲。地平線の彼方を目指して、翼を広げて羽ばたいて行くようなイメージの曲。ドラムのビートが心地よく響く。

 

⑧光のなかで

 ピアノの分散和音(和音を分散して弾いた音)がとても印象的なアレンジ。美しく清らかな雰囲気の曲。

 タイトル通り、温かな日差しに包まれているような、優しい気持ちになれる作品。癒し系とされる宗次郎サウンドの真骨頂と言ったところ。

 

⑨大地の神

 日本テレビ「Time21」挿入曲。とても力強くカッコいいメロディーの曲。

 シンコペーション(リズム・拍の強弱に変化をつける技法)を多用した推進力のあるメロディーが印象的。

 雄大さと同時に、自然・大地の持つ力強さも感じさせるような曲。

 

 

<総評>

 TVのタイアップ曲を多く含み、一曲一曲のクオリティーが非常に高い名作。

 80年代の初期の頃のアルバムの中で、オカリナ+シンセサイザーのスタイルの、ニューエイジ路線のアルバムとしては、最高傑作と言える作品。

 サウンドデザイン時代のアルバムとしては、宗次郎さんが作曲を手掛けた最後のアルバム。(次作『フォレスト』から『フレッシュ・エアー』は南里高世さん作曲による作品で、ある意味“南里高世feat.宗次郎と言える)

 次に宗次郎さんの作曲作品を聴けるのは『木道』を待たねばならず、そういう意味では、初期サウンドデザイン時代において、宗次郎さんが作曲を手掛けたアルバムの最高峰と言える。

 Wikipediaによると、このアルバムの中から「清流」「雲を友として」「こころ」「四季~愛しき子供達へ~」が、JR東日本・JR西日本の発車メロディー&入線メロディーに使われていたことがあるらしい。

 ちなみに、ジャケットのタイトル“心”の書は、次作『フォレスト』の「道」に関係している、比叡山の高僧・酒井雄哉大阿闍梨によるもの。(再発売版ではなく最初に発売された1987年版のジャケット

 

 

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