◎宗次郎アルバム第10作『木道』レビュー

宗次郎オリジナルアルバム第10

『木道』

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ポリドール移籍&初のセルフ・プロデュース・アルバム。

“木”をテーマにした、自然三部作第1弾。

 

発売日:1991.10.10(ポリドール)

 

プロデュース:宗次郎

作曲:宗次郎

編曲:坂本昌之

 

 

<レビュー>

①故郷の原風景

 『木道』以降の、宗次郎さんセルフ・プロデュース作品の中で、高い人気を誇る代表曲。コンサートでも、必ず演奏曲として取り上げられている。

 以前聴きに行ったコンサートのMCで、宗次郎さんが、この曲は藁葺き屋根の民家があるような、そんな美しい日本のふるさとの情景を表現したいと思って作った曲、と話されておられたのが印象に残っている。

 5音音階(ドレミソラという5つの音を使った音階)の、わかりやすい覚えやすいメロディーの曲で、1度聴いたら耳にしっかりと残る、親しみやすい名曲である。

 

②星降る夜に

 イントロ(前奏部)のウィンド・チャイム(キラキラと音色を出す打楽器)の音と、まるで流星を連想させる、流れるようなオカリナのメロディーが印象的。

 パーカッション(打楽器類)の音を効果的に使った軽快なアレンジ・編曲も秀逸。

 オカリナの主旋律も、速いパッセージから流麗なメロディーへの流れと、スタッカート(音を短く切って跳ねるような感じを出す演奏法)のサビ(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分)のメロディーとの対比が見事で、作曲家としての宗次郎さんの力量の素晴らしさを感じとることができる。

 

③月の下で

 イントロがちょっと演歌っぽいwシンコペーション(リズム・拍の強弱に変化をつける技法)が連続するサビのメロディーが秀逸。

ちなみに、この曲のAメロ(主旋律で1番初めの部分)の出だしを、ゆっくりめのテンポでレガート(滑らかな感じの演奏法)に奏でると、「道」(アルバム『フォレスト』の曲)っぽくなる。

 “木”がテーマのアルバム『木道』だが、序盤に星や月の曲が連続しているのは、夜の星明りの下での、森の木々の姿を描いているのかもしれない。

 

④森を歩きながら

 クラリネットファゴットといった、木管楽器の音が印象的なアレンジで、生楽器の音=アコースティックな響きを楽しめる良曲。

 ストリングス(ヴァイオリン類、弦楽器のアンサンブル)のピチカート(弦を指ではじく演奏)の音が、森を楽しく歩いているような気分を与えてくれる。

オカリナ・ソプラノ管(高音域の笛)の音色と、スタッカートを多用したメロディーとが、とてもマッチした素晴らしい作品。アレンジも見事。

 

⑤木道

 マリンバ(木琴)による、ミニマル的なフレーズ(短い音型を繰り返すタイプのフレーズ)を使ったアレンジが素晴らしい。すくすくと伸びて行く“木”の姿を連想させる。

 この曲のメロディーは、このアルバムの中では、わりと覚えにくい感じのメロディーラインなので、一度聴いただけだと印象が残りにくいかもしれないが、聴けば聴くほどに味が出てくるタイプの曲。(いわゆるスルメ曲)

 何度も聴いていると、“木の道”のドラマチックな物語を描いた曲だと感じられるようになってくる。

 

⑥大気

 傑作。個人的にはもっとこの曲を、コンサートで取り上げてもらえたらと願っている。日本的なニューエイジ音楽の傑作。(もしコンサートで演奏されるとしたら、和太鼓を取り入れて演奏されたら、素晴らしいだろうなとイメージしている)

 この曲からは、“侘び寂び”を感じられる。特にイントロ部のオカリナ・ソロが好き。

 宗次郎さんのオカリナの音色は、この曲のように、日本的な美しいメロディーを演奏する時、最も強い魅力が発揮されると言える。

 

⑦無垢

 イントロが昭和の歌謡曲っぽいwBメロ(主旋律の構成の中で2番目の部分)のオカリナのハモリが印象的。

 イ短調のメロディーではあるが、暗さはなく、6拍子系のリズムで、わりと動きを感じられる旋律の曲。

(一般的に、短調のメロディーは、哀しい感じやほの暗い印象を与える)

 

⑧森に生きるものたち

 コンサートなどで演奏されることはなく、宗次郎さんの代表曲とみなされることもまずないが、素晴らしい名曲。ニューエイジ音楽の傑作。個人的には、アルバム『木道』の中で、この曲が一番好きだったりする。

 小鳥のさえずりのSE(シンセによる効果音)から始まるイントロも秀逸。坂本昌之さんによるシンセサイザー・アレンジが素晴らしい。

 シンプルだが力強いメロディーラインが、“森に生きるものたち”の息吹や生命の鼓動を伝えてくる、見事な傑作。

 

⑨感謝の歌

 弦楽やピアノといったアコースティックな響きにのせて、宗次郎さんのオカリナが軽やかなメロディーを奏でる。

 このアルバムの中では、4曲目と並ぶアコースティック路線の曲となっている。

 

⑩安堵の風景

 比較的長めの曲。ゆったりとしたメロディーが、落ち着いた安らかな雰囲気を醸し出す。

 後半は、ドラムやエレキギターも加わり、一層の盛り上がりを見せる構成となっている。

 どうやら、宗次郎さんご自身、この曲がお気に入りのようで、コンサートで演奏されることが多い曲である。

 

⑪大地に生きる

 オカリナのみの多重録音で構成された曲。

 前曲が盛り上がった後で、エピローグ的にこの曲が配され、静かに落ち着いた雰囲気で、アルバムが終わるように構成されている。

 オカリナのみの曲にも関わらず、どこか力強さも感じさせるようなメロディーである。大地に生きる(植物も動物も)すべての生命に捧げられた賛歌のように感じる。

 

 

<総評>

 宗次郎さんがサウンドデザインから独立し、ポリドール移籍後初の、セルフ・プロデュースによる作品となった記念すべきアルバム。

 発売日も、宗次郎さんの37歳の誕生日に発売するなど、深い思い入れを感じることができる。

 宗次郎さん自身の作曲による曲を聴けるという点では、『心KOKORO』以来となる。宗次郎さんがずっと温めてきたアイデアやメロディーを、大切にカタチにした作品であると思われ、まさに結晶という言葉がピッタリの珠玉の名作である。

 編曲も『心KOKORO』以来のタッグとなる、坂本昌之さんが担当している。また、ストリングス・アレンジを、大河ドラマ『真田丸』など数々の映像音楽等で知られる服部隆之さんが担当したことで、楽曲の洗練度も増している。

 「故郷の原風景」など、現在のコンサート活動でも頻繁に演奏されている名曲が収録されており、のちの『風人』『水心』とともに自然三部作を構成し、宗次郎さんの代表的なアルバムの一つとなった。

 個人的にも、『木道』は、初めて買った宗次郎さんのアルバムであり、思い入れや想い出も深い作品である。

 

 

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<宗次郎CD総目録>

 

 

☆アルバム『木道』より「故郷の原風景」を、ヒーリング・ホイッスルでカバー演奏しています。

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【ヒーリング・ホイッスル】故郷の原風景【宗次郎作品を、ケルトのホイッスルでカバー演奏】