◎宗次郎アルバム第19作『静かな地球の上で』レビュー

宗次郎オリジナルアルバム第19

『静かな地球の上で』

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カナダ・北米をモチーフに、北半球の自然をテーマにした作品。中田悟さん録音による自然音を取り入れた、雄大なヒーリング・アルバム。

 

発売日:2001.9.21(ユニバーサルミュージック)

 

プロデュース:宗次郎

作曲:宗次郎

編曲:武沢豊(①⑥⑪)井上鑑(②③⑨⑩)、服部隆之(④⑤⑦⑧)

自然音:中田悟(①②④⑦⑨)

 

 

<レビュー>

①静かな地球の上で(武沢豊編曲)

 ゆったりとしたメロディーとソフトなリズムが耳に心地良い、癒し度満点のさわやかな曲。

 母なる地球・Mother Earthの息吹をイメージできるような、広がりを感じられる名曲。

 このアルバム・バージョンの他に、シンガーソングライターの白鳥英美子さんをヴォーカルに迎えた、シングルカット版もある。このヴォーカル版は、テレビ番組の曲として使用されたらしい。その、マキシ・シングル版は、宗次郎feat.白鳥英美子とクレジットされている。

 アルバム収録の本曲は、宗次郎さんのオカリナバージョン。

 

②月夜の森Ⅰ~動物たちの夢見る頃に~(井上鑑編曲)

 流れるようなピアノのアルペジオ(分散和音)や旋律が印象的なアレンジ。

 生楽器中心のアコースティックなサウンドが心地良く、どこか、アメリカのニューエイジ・レーベルの、ウィンダム・ヒル風味な雰囲気がただよう。もしも、宗次郎さんがウィンダム・ヒルのアーティストだったとしたら、この曲のような路線になるんだろうなと思わせるものがある。

 古楽で使われる弦楽器ヴィオラ・ダ・ガンバを取り入れているのがユニークで、月光に照らされた森の神秘性を感じさせる、幻想的な曲。

 

③希望へのトレッキング~森と人と動物と~(井上鑑編曲)

 このアルバムで一番のお気に入りの曲。聴いていて、とても前向きな気持ちになれる、希望あふれる曲調の作品。“さわやか系”の宗次郎作品の典型。アレンジも大変素晴らしく、力が湧いてくるような美しい作品。

 ミニマル風フレーズ(短い音型を繰り返すタイプのフレーズ)を隠し味的に配したアレンジ・編曲が見事。

 森や生き物、自然への“愛”を感じることができる傑作。コンサートでも、もっと取り上げて欲しいと思う名曲。

 

④出逢いの森(服部隆之編曲)

 軽やかなアルペジオ・分散和音にのって、優しいメロディーをオカリナが奏でる良曲。

 とても明るく爽やかな曲で、森の中を吹き抜けていく、暖かな風を連想させる。愛らしい雰囲気を感じられるアレンジとなっており、リスなどの森に暮らす小動物たちの姿が目に浮かんでくるかのよう…。

 アレンジ担当の服部隆之さんは、自然三部作『木道』『風人』『水心』において、ストリングス・アレンジ(バイオリン類の弦楽器アンサンブルの編曲)を担当されておられたが、本作で8年ぶりの宗次郎さんのアルバムへの参加となった。また、宗次郎さんの曲において、完全に単独での編曲担当は、本作が初めてとなる。

 

Virgin Forest(服部隆之編曲)

 とてもゆったりとした、ロマンチックなメロディーが印象的。オカリナとストリングスの見事なアンサンブルが聴きどころ。

 4曲目に続いて服部隆之さんによるアレンジだが、宗次郎さんのオカリナの音色の特色の透明感を、存分に活かした美しいアレンジとなっている。

 映画やドラマ音楽の作曲で活躍されておられる服部隆之さんらしく、このまま、映画のワンシーンの音楽にそのまま使えそうなほど、ドラマチックで抒情的な編曲である。

 

⑥宙空(武沢豊編曲)

 イントロ・前奏部のピアノのフレーズが印象的。

 終始、流れるようなサウンドとアレンジが施されており、このアルバムの中で、最も流麗な印象を受ける作品。

 このアルバムのジャケットは、透き通った空を見上げる宗次郎さんの後ろ姿の写真となっているが、そのジャケット写真のイメージに一番合っているがこの曲だと感じる。

 高く澄み渡った空を思い浮かべながら、この曲に耳を傾けると、心が浄化されていくかのようだ。

 

⑦こだまは風にのって(服部隆之編曲)

 イントロ、およびサビ(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る箇所)の部分の一部のメロディーを初めて聴いた時、どこかで聴いたことがあるようなメロディーラインだと感じたのだが、その後、そのメロディーが、車に乗ってタイムスリップする某ハリウッド映画テーマ音楽の一部分とよく似ていることが思いついた。(果たしてそう感じたのは自分だけだろうか?)

 もちろん、その映画音楽とは、曲調やテーマも異なり、たまたま一部分が似ているだけだと思うが、この「こだまが風にのって」の曲は、木管楽器のクラリネットの音を取り入れた印象的なアレンジで、とても優しくあたたかな雰囲気の美しい曲である。

 

⑧輝くいのち(服部隆之編曲)

 クラシカルな雰囲気のシンプルなアレンジの曲。とても静かで優しい曲調。クラシックの子守歌の曲を聴いているような、落ち着いた気持ちになれる。

 宗次郎さんの穏やかな曲は、胎教にも合うと思うが、この曲などはリラックス効果も高く、まさに胎教にぴったりの音楽と言えるのではないだろうか。

 

⑨月夜の森Ⅱ~動物たちの夢見る頃に~(井上鑑編曲)

 2曲目とメロディーは同じだが、アレンジが少し異なる。

 2曲目よりピアノのフレーズが減っており、ヴィオラ・ダ・ガンバではなくチェロが使われている。2曲目は、ピアノの比重が高いアレンジとなっていたが、こちらは、よりオカリナの音を聴かせるアレンジとなっていると言える。

 また、2曲目と9曲目を聴き比べれば、同じ弦楽器の仲間である、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロの音色の聴き比べも、同時にできることになる。

 

Edge of the earth(井上鑑編曲)

 地球への祈りを思わせる、力強く崇高な雰囲気のメロディーが印象的で素晴らしい。

 アレンジも、このアルバムの中では珍しく、シンセサイザーを多用したアレンジとなっており、幻想的なサウンドが味わえる。サビの部分の五音音階(ドレミソラの5つの音を使う音階)によるメロディーが、特にお気に入り。

 コンサートで取り上げられることは、ほぼ無いが、生演奏でぜひ聴いてみたい作品。

 

⑪永遠の森~終わり、そして始まり~(武沢豊編曲)

 アルバムの締めくくりにふさわしい、さわやかで雄大な広がりを感じられる作品。曲調や雰囲気的には、『木道』の「安堵の風景」に近い印象を受ける。

 とても洗練されたアレンジで、流麗で明朗なサウンドを味わうことができる。

 このかけがえのない地球の自然や森や生き物たちが、いつまでも美しく、大切に守られていくように…という願いが込められた曲なのかもしれない。

 

 

<総評>

 前作『天空のオリオン』につづき、欧米モチーフのアルバムである『静かな地球の上で』。

 本作では、カナダ・アメリカといった北米大陸・北半球の自然をモチーフに、森や、森に生きる生命が主なテーマとなっている。北米がモチーフということで、ある意味、宗次郎さん流のウィンダム・ヒル風アルバムと言うことができるかもしれない。

 曲調も、明るく爽やかで広がりを感じられる作品が多く、ゆったりとリラックスできるアルバムとなっている。

 そんなヒーリング的な要素を増幅させているのが、自然音録音の第一人者・中田悟さんによる、美しい自然音であると言える。宗次郎さんのアルバムで、これほど自然音を多く取り入れたアルバムは唯一であり、本作の大きな特徴の一つとなっている。(ちなみに、中田悟さんが自然音録音を始めるきっかけとなったのが、宗次郎さんとの出会いだったそうである。詳しくはこちらを参照→http://www.bayfm.co.jp/flint/20080309.html

 地球や自然への愛情にあふれた楽曲群は、まさに、音の森林浴ができる作品であり、宗次郎さんの数多いアルバムの中でも、特にリラックス効果が高いと感じられる美しいアルバムである。

 

 

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