<姫神・星吉昭さんの音楽~東北への憧憬>

①出会い編

 

僕が尊敬する4人の偉大な音楽家。

その内のお一人で、シンセサイザー奏者・作曲家の姫神・星吉昭さん。

 

ここでは、星さんの音楽との出会いのことや、受けた影響。そして、星さんが拠点とし、ライフワークとして描き続けられた“東北”のことなどを書こうと思います。

 

 

姫神こと星吉昭さんは、1946年に宮城県若柳町にお生まれになり、20代の若い頃は、ジャズ・ピアニストを志して東京で演奏活動。その後、電子オルガン奏者として活動後、東京から岩手に移り、講師として岩手県の音楽教室に勤務。

 

この岩手の地で、東北の伝統文化や郷土の素晴らしさを感じ、シンセサイザーで東北のこころ“北人霊歌”を奏でていく活動を展開されました。

 

1981年のメジャー・デビュー当初は、4人組バンド“姫神せんせいしょん”として活動。

アルバム4枚を発表した後、1984年にバンドを解散。星吉昭さんのソロ・ユニット“姫神”として、さらなる活動を展開され、2004年に58歳の若さで、惜しまれつつお亡くなりになりました。

 

“姫神”は現在、星吉昭さんのご子息・星吉紀さんが跡を継ぎ、活動をされています。

 

星吉昭さんは東北の、とりわけ、岩手や青森の風物をテーマとして取り上げられ、“平泉”や“縄文”、あるいは東北民謡などをモチーフとして、作曲をされました。

(※星吉昭さんに関する、より詳細な情報は、こちらをご参照ください→ Wikipedia

 

 

僕が尊敬する、喜多郎さんや宗次郎さんと同じく、ニューエイジ音楽の代表的アーティストとして知られ、また、シンセサイザー奏者として非常に著名な方でした。

 

そんな姫神・星吉昭さんの音楽と出会い、大きな影響を受けることとなったのは、僕が高校生の頃でした。

 

コラム記事「宗次郎さんの音楽との出会い」「敬愛する久石譲さんの音楽」でも書きましたが、高校時代には音楽家を志し、音楽の勉強に励んでいました。その過程で、様々な音楽家、特に自分の専門ジャンルとして研究していた、ニューエイジ・ミュージックのCDを聴きまくっていました。

 

宗次郎さんや喜多郎さんの音楽から、やがて久石譲さんや姫神・星吉昭さんのCDへと、広がって行きました。

 

喜多郎さんの音楽を聴いたきっかけは、エレクトーン講師をしていた母親が所有していたテープがきっかけでした。

一方、喜多郎さんと同じく、ニューエイジのシンセサイザーである“姫神”の音楽は、母親はあまり好みではなかったらしく、特に所有はしていませんでした。

 

とは言え、喜多郎さんをよく聴くようになった僕に対し、「喜多郎さんと同じようなシンセサイザー奏者で、“姫神”という人もいるよ。」と、名前だけ紹介はしてくれました。(もっともその時は、“ひめかみ”ではなく、“きしん”と読み間違えて教えてくれましたが…)

 

そんなわけで、“姫神”の存在を知った僕は、CD店やレンタル店で、宗次郎さんや喜多郎さんのCDを探すと同時に、同じジャンルの棚に並んでいた姫神のCDにも手を伸ばしてみることにしました。

 

その頃に初めて聴いた姫神作品は、レンタルで借りたMOONWATERというCDでした。

これは、姫神のアルバム3作目『姫神』から10作目『風土記』の中より、選曲された10曲で構成されたベスト盤でした。

 

北米でのリリース用に作られたベストアルバムで、その日本発売版だったため、曲名はすべて英語(英訳)表記となっていました。

 

聴いてみて、その素晴らしい音楽に、心打たれました。

 

CD1曲目「夕凪の賦」(MOONWATERでの表記は「Evening Poem」)の透明感のあるリード音と、郷愁ただようメロディー。

3曲目「空の遠くの白い火」(同「White Fire」)のあたたかなパンフルート系の音色と優しい旋律。

6曲目「十三の砂山」(同「Tosa Dunes」)や7曲目「大地炎ゆ」(同「Earthflame」)の、哀愁を感じさせつつも力強く心に迫ってくるようなメロディーとサウンド。そして、10分以上の長さに及ぶ大作、9曲目の「まほろば」…。

 

どの曲も、日本的な詩情を感じさせる傑作でした。

何より、温かくて懐かしい…そんな音楽だなと思いました。

 

当時の僕は、どちらかというと、静かでメロディアスなニューエイジ曲が好みで、そういう音楽を志向していましたので、姫神の『MOONWATER』は、自分の感性に、どんぴしゃりな作品でした。

 

ベスト盤『MOONWATER』をレンタルで借りて、大変気に入った僕は、テープにダビングして何度も何度も繰り返し聴きました。

また、『MOONWATER』がきっかけで、“姫神”は“ひめかみ”と読むのだと知った僕は、“きしん”と教えた母親に、正しい読みは“ひめかみ”であることを教えておきました。

 

ほぼ同じ頃にCD店で、姫神アルバム2作目『遠野』を購入しました。

(『MOONWATER』はレンタルでしたので、初めて購入した姫神CDは『遠野』ということになります)

 

『遠野』を選んだのは、特に大きな理由はなく、姫神作品を買おうと思って、店に並んでいてたまたま手にとったのが『遠野』だったというだけです。

 

聴いてみて、これまた美しい日本の風景を感じさせる音楽でした。

1曲目「春風祭」・3曲目「峠」・5曲目「早池峰」の3曲はとても気に入りましたが、『MOONWATER』に比べて、全体的に作風が違う感じがしたので、『MOONWATER』ほどには、愛聴作品になるという感じではありませんでした。

(それもそのはず、『遠野』は、初期のバンドスタイル“姫神せんせいしょん”時代の作品なので、ジャズ・フュージョン色があったりする作風です。中期の静かな作品を中心に集めた『MOONWATER』とは、少々毛色が違うというわけです)

 

ただ次第に、姫神が東北を拠点に活動していることや、東北・岩手の風物をテーマにして作曲していることが、だんだんと分かって来ました。

姫神の特集記事が新聞に載っているのを見付けると、切り抜いて大切に保管し、熟読したりしました。

 

ちょうどこの頃(1993年)、NHKの大河ドラマで『炎立つ』という作品を放映していて、この番組のエンディング・コーナーの音楽が、姫神の「風の祈り」という曲でした。

 

毎週この曲を聴くようになり、また、この曲を収録したCDアルバム『炎・HOMURA』が発売中であることを知らせる新聞記事を読み、CD店に行き購入することにしました。

 

 

深化編Ⅰにつづく>