③初期Ⅲ:親しみやすく明快なメロディーと明朗なサウンドの時代
⑥空海時代Ⅰ:空海の旅シリーズ第Ⅰ期 Vol.1~2 の時代
⑦空海時代Ⅱ:空海の旅シリーズ第Ⅱ期 Vol.3~4 の時代
⑧空海時代Ⅲ:空海の旅シリーズ第Ⅲ期 Vol.5~ 現在の時代
喜多郎さんの音楽は、制作を行う場所(居住地)によって、作風が変わる傾向が見られる。
周辺の自然環境などから、様々なインスピレーションや影響を受けて、作曲するスタイルだからかもしれない。
(主な本拠地の変遷)
1979~80年に、鎌倉・腰越に居住していた若き喜多郎さん。
『オアシス』(1979)より「朝の祈り」
(喜多郎さんのYouTube公式チャンネルより)
シルクロードのテーマなどを生み出した後、長野県八坂村(現大町市)へ。
『敦煌』(1981)より「風神」
『天空』(1986)より「天空」
八坂時代の作品『敦煌』(1981)~『天空』(1986)は、鎌倉の頃よりも、より雄大で広がりのあるサウンドとなる。
アメリカに移住した当初(1990年代前半)は、シンフォニックでロックな作風を志向し、ワールドワイドなアーティストに。
『古事記』(1990)より「大蛇」
『ドリーム』(1992)より「レイディ・オブ・ドリームス」
※歌:ジョン・アンダーソン(イエス)
アメリカのロッキー山脈・コロラド州に落ち着いてからは、ニューエイジ路線に回帰し、八坂時代の雄大さに、よりスケール感や洗練度、円熟味が加わった作風に至る。(1990年代後半~2000年代前半)
『Thinking of you』(1999)より「エストレイヤ」
『ANCIENT』(2000)より「母なる大河」
※カウンターテナー:スラヴァ
カリフォルニア州のサンフランシスコ郊外の町・セバストポールに移住した2000年代後半以降は、コロラド時代にあったような、スケール感や崇高な雰囲気のサウンドは影をひそめ、どちらかというと平面的なサウンド構成や、牧歌的な雰囲気の曲が多くなっている。
『空海の旅3』(2007)より「ウィンズ・ブロウ・オーバー・ザ・ヒル」
『ファイナル・コール』(2013)より「Shadow Of The Moon」
2021年、長野市戸隠に拠点を移転。日本・信州への復帰。
2021年9月、長野・戸隠移転後初の、新曲シングル「清明(さやけ)」配信リリース。
アメリカ・カリフォルニア時代の作品よりも、よりしっとりとした日本的な情感があふれる曲調となり、作風の変化が感じられる。
(戸隠の自然からの影響と思われる)
「清明(さやけ)」(2021・シングル配信)
こうしてみると、楽曲制作を行う環境・周りの住環境が、喜多郎さんの作風に多大な影響を与えていることがわかる。
制作拠点の風景・光景の特色と、喜多郎さんの音楽の作風が、かなりの点で一致していると言えるのではないだろうか。
(喜多郎さんの居住地と作風:まとめ)
①鎌倉(仏教寺院の多い風景)
→瞑想的な作風
②長野・八坂(日本アルプス・山岳地帯の風景)
→雄大で広がりのある作風
③アメリカ~ワールドワイド化(日米双方でレコーディング/世界のエンターテインメントの中心地・アメリカへ)
→映画音楽的な描写&シンフォニック・ロック的な作風
④コロラド州・ボルダー(ロッキー山脈・標高数千メートルの厳しい自然の風景)
→壮大なスケールと崇高な雰囲気の作風
⑤カリフォルニア州・セバストポール(サンフランシスコ郊外の田園地帯・平地の風景)
→平面的なサウンド構成・牧歌的な作風
⑥長野市戸隠(2021年~)
→しっとりとした日本的な情感あふれる作風
今後、もし喜多郎さんがどこか別の場所へ移住することがあるとしたら、また作風が変化するかもしれない。
喜多郎さんの作品とともに、制作場所・居住地にも注目すると、より深く作品を楽しめるだろう。
※2021年追記:2021年1月に、アメリカ・カリフォルニアから日本の長野市戸隠に拠点を移されたそうです。
(https://www.yomiuri.co.jp/local/nagano/news/20210224-OYTNT50137/)